物理学を学ぶ理由

 
私は、どんな学問であれ、

「自分が幸せになり、周りを幸せにしていくため」

に存在するべきだと考えています。
 
物理学は、自然界のエネルギー利用を可能にするため、様々な課題を解決することができる一方で、軍事にも転用されています。また、福島第一原発の事故では、核エネルギーを制御しきれなくなり、大きな環境汚染を引き起こしました。また、科学によって可能になった大量消費社会により、毎年、地球が1年間に生産する量の1.5倍の量が消費されるようになりました。

私は、物理学を使って何ができるのかを学ぶと同時に、それをどのように使えば、自分を幸せにし、周りを幸せにしていくことができるのかを学ぶ必要がある時代になったのだと痛感しています。

しかし、これは、簡単なことではありません。現在は、因果関係が複雑になり、広い範囲、長期的なスパンで考えないと、何が本当にプラスになるのかが分かりにくくなっています。狭い領域ではプラスになることも、より大きな範囲で考えるとマイナスになるということもあるからです。
 
物理学は、実験室という閉ざされた空間を作り、その中で再現可能な設定を作って実験を繰り返し、法則を見つけ、未来を予想するという手法を用いてきましたが、自然界や社会は、本来、複雑系であり、単純理想化した系で見つかった法則を当てはめて予想することが難しいのです。

複雑な状況を理解し、どんな行動が有効なのかを考えるためには、これまで以上に、深く広く学び、意識の容量を大きくしていくことが大事です。そのためには、自分と異なる考えを持った人と接し、自分のメンタルモデルを壊しながら広げていくことが大切だと思います。
 
そのような考えに基づき、フィズヨビでは、対話やコミュニケーションを通して学ぶ機会を大切にしています。

テスト対策の危険性

 
学力テストで点数を取ることを目標に据えてしまうと、脇目を振らずにゴールまで最短距離で進みがちになります。学ぶ過程で出会ったものの意味を掘り下げるよりも、表面的に扱って先へ進みたくなります。その結果、学びが細く、弱くなっていきます。
 
さらに、ダニエル・ピンクがモチベーション3.0で明らかにしたように、テストの点数による序列化という「アメとムチ」によって外から動機づけをすると、外からの動機づけが無くなった瞬間からモチベーションが下がり、行動が止まってしまいます。大学受験をゴールにした受験生が、大学に入ったとたんに勉強を止めてしまうのは、まさにこの例だと思います。

一方で、深く広く学び、意識の容量が大きくなると、多くのことを受信できるようになり、思考力や、気づく力が増していきます。学びのエンジンの排気量が大きくなり、短期間で多くを学べるようになっていきます。このような力は、一生役立つものとなります。
 
生徒は、常に「点数を取らなくてはならないプレッシャー」と、「必勝法を手に入れて安易に点数を取る誘惑」にさらされています。これにより、本末転倒の状況が生まれています。

本来、テストとは、理解度を測定し、生徒が学習を進めていくための手がかりを与えるものです。
 
これが、序列化の道具として使用されたところから、本来は理解することが目的であるのに、テストによって理解することが阻害されているという状況が生まれています。

私は、これを、もう一度逆転させて、理解することを第一に置き、その結果として点数が取れるというスタンスを取ります。その態度をブレずに貫くことが、生徒の学びを阻害せずに伸ばしていくために重要だと考えています。
 

必勝法が変化する時代

理解することよりもテストで点数を取ることが優先された背景には、それが必勝法として機能していた時代があったという事実があります。

一流とされる大学に入ってしまえば、一流企業に就職しやすくなり、その結果、終身雇用制により安定した生活を手に入れ、住宅ローンを組んでマイホームを購入することができる・・・・そういう幸せへのレールに乗れれば安泰だと考えられている時代が、日本にはありました。
 
しかし、テクノロジーの変化により、情報、流通、人間の移動の流動性が急激に高まり、ボーダレスなグローバル社会へと移行し、かつての必勝法が成り立たなくなってきました。その中で、個人や企業は、新たな「必勝法」を見つける試みをしています。

企業にとって新しく生まれた「必勝法」の代表例が、多国籍企業ではないでしょうか。アジア各国に安価でアウトソーシングをして利益率を高め、タックスヘイブンの国に本社を置くことで、国ごとに設定されている税制度の網を合法的に潜り抜けて富を蓄積するという戦略は、新しく生まれた「必勝法」かもしれません。

新しい時代の必勝法に適応するために、教育の必勝法も変化しつつあります。アジア各地の比較的裕福な層は、子どもをインターナショナルスクールに通わせ、イギリスやアメリカ、オーストラリアの大学に進学させています。そのようにして育ってきた子どもたちは、2-3か国語を自由に操り、働く場所を求めて世界中を自由に動き回ることができます。グローバルに展開する多国籍企業が必要とする人材になり、そこに適応しようという戦略です。これは、アジア各地における新たな「必勝法」になりつつあります。
 
しかし、これは、かつては国内だけで治まっていたヒエラルキー構造が、国境を超えて広がっている状況と見なすことができます。大量生産大量消費の文化が国境を超えて広がったことで、地球の1年間の生産量の1.5倍を消費していると言われる状況が生まれています。

いつかは、必ず成り立たなくなる社会構造に適応するための必勝法を身につけさせていく教育でよいのでしょうか?

社会とは、本来、私たちの活動によって日々生み出されているもののはずです。

私は、すでにある社会に適応するための必勝法を教えるのではなく、現状を批判的に捉え、自ら考え、未来を創り出していく力を育てる場を創りたいと考えています。

新しい教育を探し求める旅

東日本大震災を体験し、過去から連続して続くと考えていた未来が消滅したように感じました。

そこから、未来を創る力とはどんなものなのかを探す旅が始まりました。

反転授業、アクティブラーニング、授業設計、ファシリテーション、ワールドカフェ、非暴力コミュニケ―ション(NVC)、ホラクラシー経営・・・。
 
自分が学ぶためのオンラインコミュニティ「反転授業の研究」を創り、そこで様々なオンラインワークショップを企画しました。
 
国内外の様々な人にインタビューしました。3年間でインタビューした人数は50人を超えます。

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反転授業の産みの親、ジョナサン・バーグマン氏

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国際的に活躍するワールドカフェホスト、エイミー・レンゾー氏

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社会変革ファシリテーター、ボブ・スティルガー氏

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共生革命家、ソーヤ海氏

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映画監督、古新舜氏

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ホラクラシー経営、武井浩三氏

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ドリカムプランの産みの親、和田美千代氏

グローバル・オンラインワールドカフェにも参加しました。

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多くの方と対話し、気づきを元に実践することを繰り返していくうちに、新しい未来を出現させる方法が、少しずつ見えてきました。

  • オープンでフラットな関係を築くこと
  • グループに起こる小さな揺らぎを見逃さずに増幅すること
  • グループはリーダーに満ちていることを信じること
  • 場の温度が上がり、皆が一歩を踏み出しはじめるとドラマが起こること
  • ドラマのシナリオがメンバーに生きがいを与えてくれること
  • ドラマが起こると望んでいた未来が出現すること

このように、単なる集合体に相転移が起こってコミュニティとして機能するようになると、場の中に必要な情報が溢れて、お互いに助け合いながら学べるようになります。

各自が、独立した学習者としてコルブの経験学習サイクルを回していきます。

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省察と概念化の段階で、コミュニティ内の他の人の状況を参考にすることで、コミュニティのメンバー一人一人の経験学習サイクルが勢いよく回っていくのです。
 
そして、コミュニティ全体がらせんを描きながら上昇していきます。

今まで関わったオンラインコミュニティでは、まさにらせんを描いた上昇が起こりました。

このような体験をすると、既存の必勝法に頼る必要がなく、周りを巻き込んで自分たちで学習コミュニティを作り、らせんを描いて上昇して価値創造することで未来を出現できることを理解します。

隣の人を、ポジション争いのライバルではなく、強みを組み合わせて協力するパートナーとして捉えられるようになります。

このような意識の変化は、地球上で共存在することを目指していく未来を創る第一歩です。

私は、この状況をフィズヨビで引き起こしたいと考えています。

フィズヨビの約50%は受験生、約50%は社会人です。
 
社会人の意識の容量の広さに受験生が学び、受験生の科目の知識から社会人が学ぶという助け合いが起これば、フィズヨビ生全体にとって、物理を学ぶことが、とても楽になると思います。

また、生涯学習として長くフィズヨビで学んでいる方の力も借りたいです。

フィズヨビの代表は田原真人です。

しかし、フィズヨビを創るのは、フィズヨビ生の皆さんや、父母の皆さんです。
 
受講生としてだけでなく、親子での参加、運営ボランティアや運営チームへの参画など、様々な扉を開けておきますので、ぜひ、フィズヨビで一緒にやりたいことがありましたら声をかけてください。

 
最後に、社会変革ファシリテーターのボブ・スティルガーさんの言葉を書いておきたいと思います。

「お互いに耳を傾け合うことにより、未来が創られる。」